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はじめに

 私達は「生体膜」のオモシロさに魅せられた研究者です.生体膜は私達の身体を構成する「細胞の皮」と言っても過言ではありません.細胞の中には,タンパク質や核酸など,いわゆる「バイオ分子」が存在されていますが,それらの物理的な隔壁となっているのが生体膜です.私達のカラダは,60兆個の細胞から構成されていると言われていますが,その細胞一つ一つに生体膜があるのです.

 「生体膜」は,単なる「皮」として見られがちです.この生体膜の基本的な骨格は,「リン脂質」と言われる分子から構成されます.リン脂質は,石鹸(界面活性剤)の仲間とも言えます.水に溶けやすい構造と油に溶けやすい構造が一つの分子の中にあります.水の中では,ミセルという沢山の分子のかたまりが出来たり,リン脂質2分子が集合してナノサイズの油の薄膜からなるカプセル≒リポソームが出来たりします.そのリポソームが,「皮」の主成分です.

 「皮」は意外に働き者です.単なる皮には終わらず,色々な分子(タンパク質など)をその構造に組み入れて新しい働きを持たせて,さらには,それらを

最先端・次世代研究開発プログラムにご支援頂いて、世界に挑戦しています。本プログラムで得られた成果は、専門家以外の皆様でも理解できるように、本ホームページを通じて、定期的に情報発信していきたいと思います。

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  • 生命現象は,遺伝子タンパク質だけで説明できるのでしょうか?いや全てを説明する事はできません.もう一つの要素として「生体膜」があります.しかし,この生体膜,複雑で常に形が変化する特徴があるために研究が難しく,あまり理解が進んでいませんでした.
  • 私達は,生物(バイオ)を役立てる研究からスタートしましたが,遺伝子/タンパク質の働きから説明できない現象にたびたび遭遇しました.ところで,世間では「火事場のバカヂカラ」と言われます.私達のその後の研究で,「生体膜」が普段は,細胞の周りのただの「ハコ」としての役割を果たしますが,周りの環境が変化すると,潜在的な機能(バカヂカラ?)を発揮する事がわかってきました.この潜在機能こそが「Membranome」なのです.

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  • 一例を示します.酵素Aがあります.少ないエネルギーで化学反応を促進できる「生体触媒」と言われる物質で,洗剤など,一般社会にも活用されています.しかし「ひ弱」なところがあり,条件が悪ければ構造が破壊されて,本来の働きを失ってしまいます.これでは,役立てることはできません.そこに,生体膜の一種である「リポソーム」を加えます.何と言う事でしょう!バラバラになった酵素Aの一部がリポソームに識別され,構造が変化し,そして本来持っていた酵素Aの機能をもう一度取り戻す事ができるようになりました.これは私達にとっても驚くべき発見でした!
  • 私達の研究が進むに連れ,似たような現象が多く見られることが分かってきました.リポソームは,その表面の「異常さ」によって,色々なモノ(生体要素物質)を集積して,色々な働きを誘導する事がわかってきました.このように,酵素(Enzyme)の働きをもつリポソーム(Liposome)を,私達はLIPOzymeと名付けて,研究を進めています.

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  • いきなり「工場」の話しをします.日本の太平洋ベルト地帯には,数多くの「化学プラント」が林立しています.最近では,近未来的な風景が「工場萌え」などと呼ばれ,親しまれているようです.私達の根っこは,「化学工学」と呼ばれるもので,この化学プラントを作るための学問です.およそ120年前に英米で生まれ,20世紀に入って,バーバー-ボッシュ法(ノーベル賞)というアンモニア合成プロセスの  設計開発を背景に発展してきました.特に,日本の高度成長期に大きな役割を果たしました.大量のエネルギー/資源を使って役立つ「人工物」を作って,私達は便利な生活を暮らせるようになりました.しかし,人工物は地球環境を破壊してしまうという問題も出てきたのです.では,地球環境に最も適するのは何?おそらく「生物」なのです.私達は,この生物のチカラ・戦略を学んで,新しいモノづくりをすれば,今の問題が解決できるのではないか?と考えています.特に,普段は発揮しない力を発揮させることのできる「生体膜」をカギ材料とすれば,革新的な化学プラントを創る事ができると期待しています.「Membranome」の立場から「グリーンイノベーション」に挑戦します!